日本食スーパーに入ったら、たまたま「ご自由にお持ちください」のコーナーにあった一冊の本が目に留まりました。
とても久しぶりに紙媒体の本を読んだ |
星の巡礼
「アルケミスト」でも有名な、パウロ・コエーリョのデビュー作となる小説(エッセイ?)です。
あらすじ
神秘の扉を目の前にして最後の試練に失敗し、奇跡の剣を手にすることができなかったパウロ。ふたたびその剣を手にするために残された唯一の道は、「星の道」と呼ばれる巡礼路を旅して、自分でその剣を見つけることだった。
師ペトラスに導かれて、ピレネー山脈からサンチャゴへと続くスペインの巡礼の道を歩くパウロに様々な試練が課せられる。が、それは人生の道標を見つけるための偉大な旅であった...
自らの体験をもとに描かれた、スピリチュアリティに満ちたパウロのデビュー作。
感想
この本は、とても象徴的でオカルティックな話なのですが、パウロの実体験に基づくお話です。
筆者パウロは、RAM教団というスペインのキリスト教神秘主義の秘密結社のメンバーでした。
教団では、いくつかの審問をクリアすると、魔法使いになれる(!)のだそうですが、彼はその最終試験に不合格だったため、追試となる巡礼の旅に出ることとなったのです。
物語の中には、いくつも示唆に富むメッセージが出てきます。
パウロにとっての剣は、人生における「夢」や「目標」と抽象的なものに置き換えて読むこともできるのかな、と思いました。
パウロは、師のペトロスから、繰り返し「『良き戦い』を戦う」ことを諭されます。
良き戦いとは何か。
良き戦いとは、われわれの心が、そう命じるがために我々が戦う戦いのことだ。(中略)良き戦いとは、夢のために戦われる戦いのことだ。われわれが若く、夢が初めて内側からはじけ出す時には、われわれはこの上なく勇気に満ちている。しかし、まだどう戦えばよいのか、その方法を学んでいない。努力に努力を重ねて、われわれは戦いの方法を学ぶが、その頃には、すでに戦いにおもむく勇気を失ってしまう。そこでわれわれは自らに背き、自分の心の中で戦い始める。つまり、われわれは自分自身の最悪の敵になるのだ。そして、自分の夢は子どもじみていて、難しすぎて実現できない、人生を十分に知らないせいだと言い聞かせる。良き戦いを戦うのを恐れて、自分の夢を殺してしまうのだ。
良き戦いを戦うことから逃げると、まず時間が足りないという気持ちに駆られる。
やがて、夢を追わず現実を生きることが大事だ、と確信するようになる。
その考え方は一瞬の安逸をもたらすけれど、やがて失望と敗北を感じ、それに苦しめられる。
師はそんな風に説明します。
この感覚、覚えがあって非常にドキッとします。
安心・安定が大事だからと、大きな夢を描くのをやめて、守りに入った時に、自分の魂が腐って、緩やかに死に始めるような感覚があるんだよなぁ...( 'ω')
「戦い」なので、勝利もあれば、敗北もあります。
必死に努力したからといって、報われないこともある。
どんなに頑張っても、目標に届かなくてがっかりすることだってある。
全然思ったようにいかなくて、もがき苦しむこともある。
...でも、そのリスクを負ってでも、あえて「良き戦い」を戦うと決めることが、自分の人生を生き切ることだと思うのです。
この間、ちょうど「傷つくリスクを引き受ける」ということについて考えたばかりだったので、めちゃくちゃタイムリー。
パウロは、様々なレッスンを重ね、苦難を超えて、ひたすら自分の剣を探します。
最後、剣の秘密に気づいた時、彼は剣を手に入れられると確信し、道が私を「歩かせて」いると考えながら、これまでと違った足取りで進み出すのです。
剣を手に入れること(=夢や目標に辿り着くことそのもの)を目指して歩き続けるパウロは、辿り着くこと自体が本質ではなかった、と気づいた時、夢に導かれるように歩き出すのです。
剣の秘密の詳細は、ぜひ本書を読んでみてください。
まとめ
「『良き戦い』を戦いたい」と願う人、そしてそれを諦めてしまった人におすすめしたい一冊です。
最後に、本書の中で最も印象深かった言葉を引用して締めたいと思います。
「船は港にいる時、最も安全であるが、それは船が作られた目的ではない」
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