誘われて散歩に出た。

12月の風は身に沁みる。毎日ぬくぬく家で過ごす出不精の身には、いささか厳しい。


寒い寒い!と思わず口に出すと、

「でも、空が綺麗だ」

と肩に手を回された。


指された方へ顔を上げると、夕暮れに照らされて虹色に輝く雲が広がっていた。

「散歩も悪くないものだろう?」

そうかもしれないね、と私は頷いた。

ピサの空


川べりのベンチに腰をおろして、ぼんやり空を見上げる。

夕日が沈むに従って、雲の色は桃、朱、金とさまざまに移ろっていく。

ピサの空

ピサの空


時間にして30分ほど。

奇跡みたいに美しい瞬間は、あっという間に過ぎていく。


「帰ろうか」

優しい声に背中を押されて家路につく。

寒さはもう、気にならなかった。