今日はパートナーの誕生日だった。
日付が変わって0時にお祝いした後、寝支度をして日記をつけていたら、子供の頃に飼っていた桜文鳥のピースが遊びに来た。

遊びに来たというのはもちろん、文鳥の幽霊が目の前に出現したとかいう話ではない。何の脈絡なしに、昔ピースがいたことを唐突に思い出したのを、「遊びに来た」と呼んでいるだけだ。


ピースは私が小学校に上がる前くらいに我が家にやってきて、8年ほど生きた。
親友で兄弟で相棒だった。

ピースのことを思い浮かべたら、すっかり忘れていたと思っていた記憶が次々に、20年経った今でもはっきり思い出された。

するめいかが好きで、封を開けると真っ先に飛んできたこと。
一度窓から飛び出してしまったけれど、泣きながら名前を呼んでいたら戻ってきたこと。
洗面所で、水道水を張った手の中に入って水浴びするのが好きだったこと。
産卵期は私の部屋のタンスの上に巣を作ってこもっていたこと。
私が差し出す指は優しくかじるのに、父が出した指には大声で威嚇しながら容赦なくかみついていたこと。
羽を伸ばしたポーズ。
肩に乗った時の柔らかな重み。
掌に収まる暖かさ。
粟玉とおひさまの匂い。

記憶の中でピースと遊びながら、今日わざわざ来たのはなんで、と聞いてみた。
何か意味があると思ったからだ。
すると、メッセージがふわっと頭に浮かんだ。

────大事な人を大事に。自分を大事にしてくれたように。
────自分がしてみせたように、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いっていう。ハッキリしていい。
────いつもいっしょ。だいすき。ありがとう。

その言葉に、ぐっと胸が詰まって私はむちゃくちゃ泣いた。
理由はうまく説明できないが、心が熱くなって、涙が止まらなかった。
こんなの、ただの都合の良い思い込み、根拠のない妄想かもしれない。
でも、私は確かにピースのくれたメッセージだと受け取った。


泣き疲れて眠って、気付けば朝が来ていた。
文鳥一羽分の暖かさが胸に灯っているのを感じながら、私はゆっくり起き出してコーヒーを淹れた。