心の傷が治るのは、石を投げ入れた水の波紋が消えていくのと似ている。
波立ったものが、だんだんおさまっていく感じ。
あるいは、全力疾走した後に、ドキドキする飛び跳ねる心臓が落ち着いていくのにも似ている。

逆に言えば、心が二度と傷を受けないようにする、というのは難しいことかもしれない。
揺らぐ水面を永久に止めるような、生きている心臓の鼓動を永遠に止めるような、そういう無茶な話なのかもしれない。
そんなことを実現しようとしたら、もはや水や生き物でなくなるのと同じように、心が心でなくなってしまうのだろう。

また、心の傷が癒えないということもないのかもしれない。
静かな水面、平常の鼓動と同じように、心は落ち着いた形に戻っていこうとするだろうから。

心がいつまでも癒えないと感じるのは、自分で繰り返し水面に石を放り込み、落ち着いたと思ったらまた走り出して心拍数を上げているのと同じなのかもしれない。

心を癒したいと思ったら、逆らわず待つこと。
揺れるものを止めようとしたり、止まろうとするものを揺らしたりしないこと。