今日は、フジモトマサル「終電車ならとっくに行ってしまった」をご紹介します。
日常の一場面を切り出したエッセイと、作者をナマケモノに仮託した漫画が交互に綴られる作品です。
特に漫画の、現実と空想が入り混じった不思議な世界観にすっかり引き込まれてしまいました。

フジモトマサル「終電車ならとっくに行ってしまった」漫画
フジモトマサル「終電車ならとっくに行ってしまった」漫画②

また、以下の文章が特に印象深かったです。
時に「小説を読む意義が判らない。架空の話を延々と書いてあるものを読んだって何の役にも立たない」というようなことを云う人がいる。しかし「本当にあったことかどうか」「客観的事実かどうか」はじつはそれほど意味がないのではないだろうか。どれほど心が動いたか、によって人間は作られていくからである。(p.91)


ある日出会うかもしれない少し不思議な世界の漫画と、はっとさせられる文章に、心の深い部分をさわさわと揺らされるような、素敵な本でした。