-----
私の前にはぽっかりとハート型の物体が浮かんでいた。その周りに数匹の魚が漂っている。
「あれはね、ドクターフィッシュみたいなもんですよ。ああやって心にたまった汚れを食べてくれるんです」
隣に立つスーツ姿の男が、やおら話しかけてきた。
「ごらんなさい。悲しみや怒りの澱(おり)が、心に黒く付着していますね。あれが彼らの主食なんです。どんなに哀しい事も、悔しい事も、絶望も、時間が経てば少しずつ癒されていくでしょう。彼らが少しずつ食べてくれるからなんですよ」
はぁ、と私は頷く。
「自分を愛することで、魚たちは元気に働くんです。それで、心の澱がなくなっていく。
澱がなくなれば、現実が変わる」
「…現実がいい方向に変わった時に元気が出るから、そのおかげで澱が消えてなくなるってことではないですか」
「違う違う。逆なんです。澱がなくなって、ものの見え方、感じ方が変わるから、現実が変わる。いや、現実が変わるように見える、こういうわけですね」
男は魚をのぞきこみ、またにこにこと笑いかけてきた。
そういうものか、と思って、私もまた魚に目を向けた。
-----
隣に立つスーツ姿の男が、やおら話しかけてきた。
「ごらんなさい。悲しみや怒りの澱(おり)が、心に黒く付着していますね。あれが彼らの主食なんです。どんなに哀しい事も、悔しい事も、絶望も、時間が経てば少しずつ癒されていくでしょう。彼らが少しずつ食べてくれるからなんですよ」
はぁ、と私は頷く。
「自分を愛することで、魚たちは元気に働くんです。それで、心の澱がなくなっていく。
澱がなくなれば、現実が変わる」
「…現実がいい方向に変わった時に元気が出るから、そのおかげで澱が消えてなくなるってことではないですか」
「違う違う。逆なんです。澱がなくなって、ものの見え方、感じ方が変わるから、現実が変わる。いや、現実が変わるように見える、こういうわけですね」
男は魚をのぞきこみ、またにこにこと笑いかけてきた。
そういうものか、と思って、私もまた魚に目を向けた。
-----